遡ること4年前くらい、学生時代の友人とオンラインで雑談していたとき、「最近のジャンプの漫画は面白いから読んでみろ」と言われた。当時は『鬼滅の刃』すらよく知らなかったが、そのとき紹介された2作が『チェンソーマン』と『呪術廻戦』だった。特に呪術廻戦については作者が自分達と同い年くらいと聞かされ、少し親近感が湧いたのを覚えている。当時ネットで数コマくらい見た感想は「ハンターハンターじゃん」だったのだが、自分と同年代の人間が同じ子供のころに読んだ漫画に影響を受け、第一線で活躍しているというのが少し嬉しかった。
一般的かはわからないが、少なくとも自分の周りでは呪術廻戦はその「親近感」がウケている要因の一つだったと思う。作風やセリフ回し、設定はかなり「ヒネたオタク」っぽく、オマージュ元も今の20-30代が摂取してきたコンテンツ中心だった。そういう雰囲気がネットのヒネたオタクからも支持されていたように感じる。漫画サークルで一目置かれているようなセンスの良い奴を囲むような感じで、オタク友達のような距離感で「芥見は~」とか言っている人をよく見かけたのも、割とそういう親近感から来ていると思う。
なぜ売れたか?みたいなのは特に細かくは話さないが(他の人が色々言ってるだろうし)、とりあえず上記で触れたようにセンスは読み始めた頃1からずば抜けていたと感じた。呪術の出てこない弁護士や芸人の単発の話(しかも面白い)が週刊少年ジャンプに載ってたのはかなり異質だったし、味方キャラの遺言を「呪い」と呼んだりする感性もかなり独特だった。そしてそういう独自のセンスがキャラクターに深みを出して、多くのファンを生んだのかなとも思う。
個人的に残念だったのが死滅廻游編の導入(禪院家壊滅)あたりで、1ヶ月くらいの長期休載を挟んでしまったこと。アニメの監修に加えて作画コストのかかりそうな渋谷編2が終わった直後だったのでしょうがないっちゃないのだが、休載時の挨拶で「今までも打診はあったが、スピード感を優先しまとまった休載をとらなかった」と言っていたのもあって、休載が明けてからはかなりスピード感(ライブ感)優先の漫画になってしまったと思う。毎週目まぐるしく展開が変わってそれはそれで週刊漫画としては面白い部分もあったのだが、それでも自分としては渋谷編以前の丁寧な雰囲気も大事にしてほしかった。
最終章の新宿編にもなるとアニメ2期やらイベントやらでさらに心身ともにボロボロになってそう3なのが傍目にも分かり、かなり見ていて苦しくなる部分もあった。粗が出るとネットでは色々言われ、巻末コメントでは他の作家が日記を残してるなか一人だけ毎回設定の補足をし、多忙で作画もあまり安定せず…という感じでかなり負のスパイラルに入りかけていたと思う。個人的には週刊漫画ではあまり設定の粗とかは気にしないでもいいと思うのだが、作者本人としてはやはりこだわりたい部分なんだろうな4というのも分からなくはないのでそれが逆に辛かった。楽しそうに描いてた「みんなのオタク友達の芥見君」だったのに…
ただしやはり描きたいシーンが多くなるであろう最終盤(フーガ発動くらい)からはかなり持ち直した感じもあり、おそらく前から考えていたであろう結末へと無事着地できていた。色々大変そうだったが、「王道から逃げない」と言っていた通り、爽やかに終わってくれてひとまずは良かったと思う。
次回作…は気が早すぎるかな。尾田栄一郎や堀越耕平のように自分のアイデアやキャラをみんなにガンガン発表していきたい!というタイプではなく、自分の内面に溜まったものを自分のために吐き出しているような描き方をしてそうなので、よっぽどのことがない限り次作は無いかなー5と思っていたのだが、巻末コメントで「また挑戦できるように頑張ります」と言っていたのが嬉しかった。ゆっくり休んで、またいつか載る日を楽しみにしてます。6年間お疲れ様でした!