機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning- (2025)

「ガンダム」のサンライズと「エヴァ」のスタジオカラー1が手を組んだ!ということで、実質カラーナンバー2の鶴巻和哉が総監督を務める最新のガンダム作品。

ネタバレを警戒してる人はわざわざこの記事見ないと思うのでこの先普通に全部ネタバレします。

前半

まず映画冒頭だが、『機動戦士ガンダム』2(以下1st)の第1話冒頭をそのままなぞったものから始まる。ナレーションやSEも1stそのままなので、観客はここで「宇宙世紀3ものだ!」と気付くわけである。でもなんか1話のサイド7侵入に参加していないはずのシャアが参加しているし、なんかガンダムのデザインも全然違うし、シャアがガンダム奪取して無双しちゃうし、なんだこれ…と困惑しているうちに、なんとジオンが戦争に勝利してしまった!観客はここでさらに「1stのIF物だった!」と気付く二段構え…なのだが、実は自分はなんとなく設定だけはネタバレで知ってしまっていた。それでも実際シャアとかが出るのは知らなかったのでまぁまぁ驚いたけど。

で、このGQuuuuuuXだが、前半は鶴巻和哉ではない別の人間が脚本を書いているとか。間違いなく前半部のようなこういうオマージュ・踏襲をやりたがるのはカラーのナンバー1、庵野秀明だろう。氏はまさしく模倣の天才であり、今回についてもそのオタク性から来る原典への忠実さへの異常なこだわりは(オタクの中で特にめんどくさい部類の)ガンダムオタクもそれなりに納得させるものではあったと思う。

IF物というのはゲームではよくあったのだが、アニメで実際に1stそのものの展開に手を入れるというのはやはり敬遠されていたと感じる。『機動戦士ガンダム』はオタクの中では聖域中の聖域であり、それに手を入れることは1stの監督の富野由悠季4と、オリジナルのキャラクターデザインの安彦良和5にだけ許されているものという暗黙の了解があったとは思う。今のサンライズなんてガチガチのガンダムマニアしかいないだろうしなおさらだろう。ただし富野由悠季自身は新訳Zである程度リメイク物にケジメは付けたと思うし(そもそも本人のもっとも成功した作品が1st劇場版なので、いまさら特に手を入れる気もないだろう)、安彦良和の『ORIGIN』もひと区切りついたので、別に二人の許可がないとできないわけではなかったと思う。誰もやりたがらないだけで…

で、誰がやれるかとなったときに、ある程度1stに触れるくらいの「格」があって、富野由悠季とも親交が深い人物…パッと思い浮かぶ人物は永野護6、押井守7、そして庵野秀明くらいだろうか?こういうときにとりあえず行動力があって人を集められる能力というのに関しては庵野秀明は大御所と呼ばれる監督のなかでもピカイチだと思う。実際に出来上がったものもまさに「見たかった庵野版ガンダム」という感が強く、『シン・ゴジラ』でやったように、オリジナルを模倣しつつ新しい解釈を提示するというのがこのGQuuuuuuXでもよく出来ていたと思う。

後半

衝撃のジオン勝利から数年後となり、打って変わって後半は鶴巻和哉色が濃い作品となる。『トップをねらえ2!』8『フリクリ』9から感じる眩しさというのはけっこう監督の若気の至りから来るものだと思っていたのだが、その頃から作風が変わっていなくて驚いた。後半も豪華な作画で可愛いキャラや格好いいメカが動くのは良かったのだが、こちらはいつもの鶴巻和哉といった感じが強く、個人的にはそこまで引き込まれるものはなかった。女主人公のガールミーツガールも『水星の魔女』でやったし、これでやるなら別に前半の展開じゃなくても良くない?という気持ちもあったかな。そこら辺のミッシングリンクを埋めるのがイケオジのシャリア・ブルなわけだが、コイツもまぁオリジナルではぽっと出の敵のオッサンの一人でしかなかったので、改変しやすい奴を選んだな…とちょっと邪推してしまった。そもそもお前そんな顔じゃなかっただろ!

ということで後半は前半のアクセルベタ踏みからはちょっと失速したかなという印象だった。ただし今後もTVシリーズで展開されるとのことなので、今後の展開でさらに1stとの融合を図った展開になる可能性はある10と思う。『トップ2』もある話で庵野が参加し、そこから作品の流れがガラッと変わる展開があったので、同じような展開を期待したい。エヴァもシン物も終わって暇してんだろうし…

まとめると、個人的には映画館で早めに見てよかったと思いますが、アニメも熱心に追いかけるかどうかは今後の流れ次第という感じでした。ただやはりインパクトはなかなかのものがあるし、ストーリー抜きにしても作画も良くて大画面での見応えもあったので、わざわざ劇場で見る価値もあるとは思います11

 

 

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